三省堂書店 BOOKS SANSEIDO

「北大の先生が選んだ本」第26弾更新しました!

掲載日:2022年1月12日

三省堂書店札幌店と北海道大学出版会様とのコラボレーションコーナーが第26回目の更新を迎えました。

第26弾は、北海道大学大学院文学研究院教授の「権錫永」先生をお迎え致しまして、

『「国家」との付き合い方を考える』というテーマでお送り致します。

 

[選者より]
「民族主義」は、外圧をはね除けて人間らしく生きようとするムーブメントとして始まりました。成功すれば、独立した国民国家を形成し、維持することができます。そうやって目的を達成した民族主義は、一転して帝国主義を支えるエネルギーにもなります。その過程は、「国家」・「国民」が絶対的なものとなって個人を呪縛し、世界的に対立・分裂を極めた歴史、と言い換えることができるでしょう。
私たちが切実によりどころとするものでありながら、同時に私たちの知性を鈍らせ、私たちを抑圧し、しばしば対立・衝突へと追い立て、負の歴史を背負わせ、気疲れさせるもの。それが、21世紀の今も変わらぬ国家の両面です。誰にとっても自分の国は大切ですが、その国家との付き合い方は実に難しいものです。
様々な世界大の課題を突きつけられながらも、国家という枠組みから逃れられない我々人間が、時々私には滑稽にみえることがあります。世界大戦に行き着いた帝国主義の時代の安易な対処とオーバーラップしてみえ、悲観的になるのです。国家の本質を考え、歴史において選ばれることのなかった選択肢にも思いを馳せてみること。それが義務とも思えるような時代に、私たちは生きています。
ここに挙げる私の選書10冊が、「国家とは何か」、「国家との付き合い方はどうあるべきか」と悩むあなたにとって、良い道案内役になってくれると信じています。

 

今回もその中から3点ほど、権先生にご選書頂いた商品をコメントとともにご紹介致します。

 

●『からまりあい重なりあう歴史::植民地朝鮮の文化の力学』

権錫永 著 北海道大学出版会 発行 本体価格:3,400円

 

柳宗悦の朝鮮のための「愛の仕事」、移植された桜、文化的欲望をかき立てる博覧会…、そこに引き起こされた闘争・贈与・受容・敗北・創造。複雑に織りなされた植民地の文化の力学について朝鮮の人々の思いを描き、「民族の物語」からの転回を見透す。

 

●『定本想像の共同体:ナショナリズムの起源と流行』

ベネディクト・アンダーソン 著 白石隆・白石さや訳 書籍工房早山 発行 本体価格:2,000円

 

ナショナリズム(国民主義)を再定義した本。「国民」はまったく自明なものではなく、むしろ発明された「想像の共同体」である。会ったことも見たこともなく、名前さえ知らない、遠くに離れた存在どうしが、どうして「国民」と呼び合い、強く共感し合うことになるのか。著者が導き出した答えは「想像力」。韓国の軍事政権下で徹底的に叩き込まれた私のなかの「国民意識」を打ち砕いた、私にとっての衝撃の本である。

 

●『完全版 土地 01巻』

朴景利 著 金正出 監修 吉川凪 訳 クオン 発行 本体価格:2,800円

 

韓国の国民文学とも称される超大作。絶筆と闘病生活も間に挟んで、完成まで25年を要した。1897~1945年までの約半世紀に及ぶ一家の波乱に満ちた歴史。朝鮮を統治した日本を抜きにしては語れない半世紀である。その歴史の襞にふれることは、そのまま日本という国家と向き合うことにほかならない。

 

他にも権先生には多数ご選書頂きました。是非、当店の売場にてご覧下さい。

 

次回は春ごろ更新予定です!!今後の企画にご期待下さい。