三省堂書店 BOOKS SANSEIDO

「北大の先生が選んだ本」第23弾更新しました!

掲載日:2020年11月29日

三省堂書店札幌店と北海道大学出版会様とのコラボレーションコーナーが第23回目の更新を迎えました。

第23弾は、北海道大学名誉教授(文学博士)の「金子勇」先生をお迎え致しまして、

『「日本の少子高齢化」を読む30冊 』というテーマでお送り致します。

 

【テーマ概要】
 団塊世代の社会学者として時代の推移に関心が強く、都市化の研究からコミュニティ論を学び始めた。
地方創生という言葉はなかったが、地域活性化や地域福祉はすでに使われていて、高齢化が始まってもいた。
そこで先行する研究成果を学び,自分で調査を行うという方法論を身につけて、高齢化関連調査を実施して、国際比較を試みた。これらの高齢化研究の集大成が『日本のアクティブエイジング』(北海道大学出版会、2014)である。
 その後、1990年代からは高齢化研究とともに少子化の理論とその対応策に焦点を移して、30年にわたる札幌市子ども未来局で各種の委員会や審議会の経験を活かして、社会調査と政策提言を積み重ねてきた。こちらの集大成は『日本の子育て共同参画社会』(ミネルヴァ書房、2016)であり、合わせて出した『「地方創生と消滅」の社会学』は自らのコミュニティ研究の到達点になった。
 その後、少子化の応用問題として政令指定都市の現状と札幌市の時系列データを活用した「児童虐待」研究を続けて、『「抜け殻家族」が生む児童虐待』(ミネルヴァ書房、2020年)を刊行した。
 時代の推移を「診断する」という問題意識が濃厚であり、社会学の観点から社会変動論と政策論への配慮にも関心が強かったといえる。

 

今回もその中から3点ほど、金子先生にご選書頂いた商品をご紹介致します。

 

●『ことわざ比較の文化社会学-日英仏の民衆知表現』

金子勇 著 北海道大学出版 発行 本体価格:3,000円

 

 芥川龍之介の「藪の中」に触発され、ことわざ解釈の因襲性や類型性それに常識性に対して、社会学者の個人的表白として現代日本に活かせるような新しい内容を探求した。具体的には、「民衆知」としての110の「ことわざ」を日本語、英語、フランス語の単語と表現を立体的に比較すると、3か国語で単語と表現が一致していたものが30.0%、2つ一致が26.4%、それぞれが異なる単語と表現であったことわざが43.6%になった。この試みで、日本語圏、英語圏、フランス語圏の文化の奥行きとともに、人類共通の知識の普遍性が窺える結果が得られた。

 

●『「抜け殻家族」が生む児童虐待-少子社会の病理と対策』

金子勇 著 ミネルヴァ書房 発行 本体価格:3,000円

 

 日本現代家族の変質した姿を、グードが50年前に使った‘empty shell family’(抜け殻家族)と命名し、そこから児童虐待死の問題を探求した。とりわけリスクが大きい「特定妊婦」、出産後の「早母」の予防と支援を柱として、夫婦間の暴力と不和、ネグレクト、ハラスメントなどへの社会的介入の段階と方法について処方箋を描いた。最終的に、警察制度の改革の一環として「子ども交番」の設立を提唱した。

 

●『大衆の反逆』

ホセ・オルテガ・イ・ガセト 著 神吉敬三 訳 筑摩書房 発行 本体価格:880円

 

 神吉敬三は訳書(角川文庫版、1967年、品切絶版)の解説で、「ルソーの社会契約論が18世 紀に、マルクスの資本論が19世紀に対して意味したものを、本書は20世紀に対して意味する」 と紹介した。有名な「乱心した一般大衆は、自己閉塞性が強く、頑迷さや専門的知識への不従順さ、思考の凡庸さが目立ってくる。飢饉が原因の暴動では、一般大衆はパンを求めるのが普通だが、なんとそのためにパン屋を破壊するというのが彼らの普通のやり方なのである」(角川文庫版:62)。これは歴史的事実からの引用ではあるが、現代社会でも至る所で認められる大衆現象でもある。

 

他にも多数、金子先生にはご選書頂きました。是非、当店の売場にてご覧下さい。

 

次回は来春ごろ更新予定です!!今後の企画にご期待下さい。