三省堂書店 BOOKS SANSEIDO

創業140周年 ご挨拶

掲載日:2021年4月8日

創業140周年にあたり

 

代表取締役社長  亀井 崇雄

 

 令和3年4月8日、私たちは創業140周年を迎えました。これもひとえにご愛顧いただいたお客様、ご支援くださった取引先の皆様のお陰と心より感謝申し上げます。10年前の130周年では東日本大震災の余震に怯える日々の中で迎えましたが、この140周年もまた新型コロナウィルスの感染拡大で緊急事態の余韻冷めやまぬ状態で迎えることとなりました。しかし、140年続いた弊社の歴史上で様々な苦難と直面し克服してきた先輩方に習い、この難局も知恵を出して乗り越えてゆきたいと思っております。
 日本の近代国家成立へ向け、当時の明治政府が邁進していた明治14年4月8日、三省堂書店は産声をあげました。その起源は麹町で下駄屋を営んでいた創業者・亀井忠一が不運にも大火事で店を失い露頭に迷っていたところを、妻や知人の力を借りて神保町で古書店を開業したところから端を発します。やがて新刊書店、出版事業を興して英和辞典や百科事典を出版するまでに至りました。鎖国状態が解けて日本が一気に変わろうとしているなかで、書店業は大きな飛躍のチャンスに満ち溢れた魅力的な商売だったのだと思います。欧米列強に追いつけ追い越せと日本人が勉学に励む時代に、学びのサポーターとして遺憾なく事業を拡大させ、三省堂書店は近代日本の発展とともに歩んで参りました。
 そして、時代は明治・大正・昭和・平成を経て新たに令和の時代を迎えました。創業140周年にあたる令和3年は奇しくも創業当時と同様、世界が一変する年となりました。未曾有のパンデミックを引き起こした新型コロナウィルスは社会の有り様を一変させ、人々が生活様式を変えざるを得ない状況に追いやりました。戦後最悪とまで言われるこの不況下で様々な事業体がそのあり方を見直して大きな方針転換を迫られる局面を迎えています。まさに時代は創業当時と同じ大変革期とも言える様相を呈しております。そのような時こそ創業者のようにピンチをチャンスと捉え、新たな行動を生み出して前進していくことが重要だと考えております。
 幸いにも、出版業界は他の業界と比べてコロナの影響を受けずに堅調な数字を維持しております。このような不確実な時代だからこそ多くのお客様が本を手にとってくださったことは書店業を営む弊社にとって勇気づけられることであります。新しい時代に向けて変わらなくてはならない日本と、それを支える一人ひとりのお客様の学びのサポーターとして、創業当時と同じように社会に貢献してゆける三省堂書店でありたいと思っております。
 この度の140周年は「困難な時代も、新しい時代もいつだって『本』がある」と銘打ちまして様々な企画を一年を通じて打ち出して参ります。数々の困難に打ち勝つためのヒントとなるような本はもちろん、お客様の生活がより豊かになるような商品を多数揃えてお客様へお届けいたします。引き続き三省堂書店の店舗・外商・通販、並びに雑貨店「神保町いちのいち」へ変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。
 新型コロナウィルス感染者数拡大の影響でお客様におかれましては不自由な生活を強いられていること、心よりお見舞い申し上げます。一日も早くこの事態が終息し、平穏な生活を取り戻せるよう心から願っております。